麻とヘンプの違いは?大麻の呼び方・環境問題との関係

2023/07/14

素材のお話

衣服や帽子などの品質表示タグでよく見かける麻。
知っている人も多いのではないでしょうか。

でも、麻って何?と聞かれると、なかなか答えることができないですよね。
私もその1人で、麻についていろいろと調べてみました。

※帽子はジュート、生地はリネン、ヘンプ、ラミーです。

ヘンプは麻の種類のひとつ

麻は、20種類近くの植物から採れる繊維をまとめて「麻」と呼んでいます。

約20種類がそれぞれ違った性質を持っていて、様々な用途に使用されています。

麻の種類の代表は、ジュート(黄麻(おうま))、リネン(亜麻(あま))、ラミー((ちょ)())、ヘンプ(大麻(おおあさ))などがあります。ジュートはコーヒー袋などに、リネンはタオル、衣類などに、ラミーは衣類などに、ヘンプは衣類、縄などに使用されることが多く、それぞれの性質を生かして活躍(?)しています。

麻にそんなに種類があるなんて、知りませんでした。

日本における麻の歴史は古く、1万年前からヘンプが栽培され、ヘンプのことを麻と呼んでいたということで、ヘンプについて詳しく調べてみました。

ヘンプと大麻

ヘンプは、大麻(おおあさ)と呼ばれている麻の1種で、収穫時には、茎は2mほどの高さになります。

茎から採れる繊維で布や縄を作り、種はそのままでも食べることができ、現在でも調味料などに使用されています。

また、葉や花穂、根は、医療の場で薬として使用されるなど、残すところなく利用でき、とても重宝されています。

昔は、神様の宿る草として神聖なものとされていました。

今でも、その名残はあり、神主さんがお祓いをするために使用する祓串(はらえぐし)は、大麻(おおぬさ)とも呼ばれ、伊勢神宮のお札は「神宮大麻(じんぐうおおぬさ)」と呼ばれています。

しかし、大麻という字を見て「あれ?」と思った方も多いかと思いますが、大麻(たいま)とも呼びますよね。

私たちが報道などでたまに耳にする違法薬物である大麻(たいま)は、葉や花穂(かすい)を利用したものをいい、THC(テトラヒドロカンナビロール)という気分を高揚させる成分が一定以上含まれているものです。

同じ大麻でも種類が異なり、THCの含まれている量によって分類されていて、現在、使用されているヘンプには、THCはほとんど含まれていません。

ちょっとびっくりしましたが、一安心ですね。

※生地はヘンプですが、紐は麻です。

環境にやさしいヘンプ

ヘンプは、戦前、日本各地で数多くの農家さんが栽培していましたが、戦後、免許を取得しなければ栽培することができなくなり、徐々に栽培農家が減少してしまいました。

同じ大麻でも種類が違うのに、どうしてヘンプ農家さんまで規制されなくてはいけないのか、不思議な感じがしますが、当時は、違う種類だという認識があまりなかったようです。

今では、数少ないヘンプ農家さんが伝統を受け継ぎ、頑張ってくれています。

頑張ってくれているから、ヘンプを使用した商品を私たちは手に取ることができるのですね。

大麻(たいま)が違法薬物となり、悪いイメージが定着してしまいましたが、同じ大麻でもヘンプは、近年、「環境にやさしい自然素材」として見直され始め、世界の国々で、栽培農家が増加しています。

ん?「環境にやさしいとはどういうこと?」と、思いますよね。

それは、温暖化と密接に関係があります。

温暖化が深刻な問題となっている今日、ヘンプは、私たち人にとって、とても大きな役割を担ってくれています。

どういうことなのか・・・

それは、二酸化炭素の吸収量の多さと収穫時期の速さです。

他の植物に比べ、1.5倍から10倍以上もの二酸化炭素を吸収してくれ、早ければ種をまいてから3か月で収穫ができるというのですから、驚いてしまいますよね。

しかも、土壌をきれいにしれくれるので、収穫後、同じ畑で違う植物を育て、収穫することができる効率の良さがあります。

また、自然に降る雨さえあれば、水をあげなくてもいいほどに少量の水で育ち、化学肥料もいらないという節約家で、超環境にやさしい植物なんです。

現代では、エコな素材として、ヘンプ100%のプラスチックや、ヘンプとコンクリートや石灰を混ぜて作られるヘンプクリート、さらにはヘンプオイルから作られるヘンプバイオディーゼルなど、様々な分野で価値を認められ、様々なものが開発されています。

大麻(おおあさ)が、これほどまでに環境にやさしい植物だとは、まったく知りませんでした。

※生地はヘンプですが、紐は麻です。

ヘンプの特徴

ヘンプは、商品になっても超優れものです。

耐久性・吸水性に優れているうえに抗菌性もあり、バクテリアなどの繁殖を抑えてくれるので、商品をより長持ちすることができます。

ヘンプ自体は伸縮性に乏しくて丈夫なので、縄などに使用されることが多い素材です。

ただ、ニット生地にすることで緩和することができたり、違う素材と混紡したりするなどして、衣類、帽子、かばんなどにも活用されています。

生地にすると、しわになりやすいので、洗濯をした後、アイロンがけが必要になります。

「アイロンがけめんどくさいんだよね・・・」という人は、脱水の時間を減らし、水分を含んだ状態でしわを伸ばしてあげると、水分が助けてくれてしわが伸びやすいです。

ただ、水分を多く含む状態になるため乾きにくくなってしまいますので、洗濯ものに扇風機をかけて渇きをよくするなどの対策をしてくださいね。

また、速乾性があり、洗濯しても乾きやすいというメリットもあります。

抗菌性があり、汚れも付きにくいので、毎度、洗濯する必要がなく、ぬれタオルで汚れを落とす程度でも十分です。

衣類などを洗濯する場合は、洗濯ネットに入れておしゃれ着コースで洗うことも可能ですが、摩擦に弱いので、手洗いで優しくこすらないように洗うといいそうです。

ただ、汚れが付きにくいということは、染色の際に色が染まりづらいということで、洗濯をする際には、他の衣服と一緒に洗濯をすると、色移りしたりする場合もあるようなので、気を付けてください。

生地にした時のもうひとつ特徴をあげると、繊維状の性質によってネップやスラブがある場合が多いです。

ぱっと見、傷のように見える場合もあるので、嫌う方も多いかもしれませんが、ヘンプという天然素材を使用するうえの特徴と捉えることが多いようです。

「ネップって何?」という人もいますよね。

そんな方は、「生地にある糸のかたまりは不良品?スラブとネップの違いは何? – どら猫帽子店 | ブログ (e-boushi.com)」を読んでみてくださいね。

もうひとつ、ヘンプ生地で何かを作ろうと思ったときに、気を付けたいことをみつけました。

それは、生地の端がほどけやすいということです。

縫い代が少ないとほどけてしまう場合もあるので、少し多めに縫い代を取った方がいいのかなと思います。

環境にもやさしくメリットもたくさんあるヘンプですが、品質表示のうえでは残念ながら麻にはあたりません。

日本で麻として表示できるのは、リネンとラミーの2種のみ。

ヘンプは「指定外繊維」として表示されることが多く、品質表示を見ても、ヘンプ商品であることがわからないことも多いのが現状です。

ヘンプとして表示される場合でも「指定外繊維(ヘンプ)」「指定外繊維(おおあさ)」と、表示されています。

大麻(おおあさ)の良さが見直され始めてはいるものの、日本における大麻(おおあさ)の立ち位置が、まだまだ世界に追い付いていないということがよくわかる気がします。

すっかり麻というよりもヘンプの勉強になってしまいましたが、ヘンプも麻の1種。
少し、麻のことを知ることができたのではないかなと思います。

最後に、みんなでヘンプを応援していきましょう!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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